『バタフライエフェクト(バタフライ効果)』という言葉を耳にする状況は限られていると思いますが、ときどき小説やゲームなどに登場することもあるので「なんとなく聞いたことがあるような」と感じる人も多いかもしれません。
知る人ぞ知る『バタフライエフェクト』について解説します。
『バタフライエフェクト』とは
『バタフライエフェクト』は2つのワードの組み合わせです。
- 『バタフライ』=蝶(ちょう)。虫の蝶のこと
- 『エフェクト』=効果、または結果という意味。今回は「結果」のこと
『蝶によって引き起こされる結果』という事なのですが、これでは意味がわからないのでさらに細かく、例にして言いましょう。
ブラジルで一羽の蝶が羽ばたいた。
蝶は羽を動かす事で飛び、空気が動く。これによって起きた「とてもちいさな空気の動き」は、いつか日本を襲う台風を引き起こす。
人によっては「何言ってんの?そんなわけないじゃん」と思われるかもしれませんが、どんな小さな事であれなんらかの「影響」があり、思わぬ大きな結果へとつながる、全てのことは影響しあっているということ、それが『バタフライエフェクト』です。
実際に、日本の天気予報で「日本から見て地球の裏側にあるブラジルで、過去に蝶々が飛んだことで、本日、日本付近に台風が発生する」なんてところまで考えませんし、考えようと思ったところで計算できません。「その影響は無視できる範囲である」みたいな言葉はニュースなんかでも時々聞く言葉です。
しかし、蝶の羽ばたき、私たちの呼吸、歩いた時などには必ず空気が動き、影響しあっています。蝶の羽ばたきも世界中の空気の動きの1つであり、それは台風の発生にも関係がある。これ自体を信じるかどうかはあなた次第ですが、それはさておき『バタフライエフェクト』は「どんな小さな事でも思わぬ大きな現象を引き起こすことがある」という意味の言葉です。
納得できん!という方は「ことわざみたいなもの」くらいに考えて良いと思います。実際に、日本に伝わることわざにも『バタフライエフェクト』が存在します。
『バタフライエフェクト』は日本のことわざにもあった
『風が吹けば桶屋が儲かる』(かぜがふけば おけやがもうかる)
これが『バタフライエフェクト』と意味が近いことわざです。これはショートストーリー形式で語ることができます。
風が吹いた。
風が吹くと、ホコリや砂が舞い上がる。
目に砂が入ってしまい、目が傷ついて目が見えない人が増える。
目が見えない人にできる仕事は少なく、三味線(しゃみせん。ウクレレなどと同じ弦楽器)を弾いてお金を稼ぐしかない。
三味線の材料は猫の皮だった。三味線を作るため、猫が捕まり街から猫がいなくなる。
猫がいなくなるとネズミが増える。
ネズミは家やお店の桶(おけ)をかじって壊してしまう。
みんなが桶を買うので、桶屋は大儲けして喜ぶのであった。
このように、一見関係のない事でもつながりがあり、影響しあった結果である。まさに『バタフライエフェクト』です。
また、少し違うけれど印象の近い言葉もあります。
『塞翁が馬』(さいおうがうま)もある意味『バタフライエフェクト』
『人間万事塞翁が馬』(にんげんばんじ さいおうがうま)は「何が起きるかわからない」という意味の言葉で、「だから予想なんてできないし、考えすぎないほうがいいよ」という意味で使われます。
塞翁が馬もストーリー形式のもの。
ある日、占い師の老人の馬が逃げ出してしまいました。
周りの人は老人をかわいそうに思いましたが、占い師は「この出来事が福をもたらすかもしれない」と言います。
すると、逃げ出した馬は足が上手い馬と一緒に戻ってきてくれたんです。
周りの人はいい馬が手に入って喜びましたが、占い師は「この出来事が悪い結果になるかもしれない」と言い出しました。
後日、占い師の息子が新しく手に入った馬から落馬して、足を骨折しました。しかし老人は「これがいい事につながるかもしれない」と言います。
その後、戦争が起きます。
頑丈で健康な男性は兵士になることが義務付けられましたが、息子は足を骨折したことで頑丈とは言えない体だったため、兵士にならずにすんで命拾いしたのです。
一見いいことでも悪い事につながるかもしれないし続けていい事につながるかもしれない。その逆も然りで、人生は予測できない。
一種の『バタフライエフェクト』とも言えるストーリーです。
果たして『バタフライエフェクト』はオカルトなのか?
蝶の羽ばたきが台風を起こす。人によっては馬鹿げていると感じるかもしれません。
しかし、全てのものが引力を持ち、動けば空気を動かし、物質に干渉します。計算の上で「無視して良い」「誤差の範囲」と言っても、人間が計算する必要がなかったりできなかったりするものでも、無いわけではありません。
計算問題のために「ただし空気抵抗はないものとする」と言っても、現実に空気抵抗はあります。
コンピュータは「ランダム」を生成することができない
コンピュータは「ランダム」ができないことはご存知でしょうか。
しかし実際は、コンピュータでランダムな数値を出す、といったプログラムはさまざまな面で用いられています。くじ引きで当選番号をコンピュータによって決める時もそうですね。
実際にはこれは疑似乱数を用いたもので、複雑な計算をさせることで「ランダムっぽく」しているだけなのです。例えば、A,B,C,D,Eをコンピュータにランダムで出させるために次のような計算をさせます。
- 年+月+日+時+分+秒×適当な数字
- 2021+1+21+23+59+36×324=13789
- 出された答えの1の位で判定
- 0か5ならA
- 1か6ならB
- 2か7ならC
- 3か8ならD
- 4か9ならE
これなら1秒ごと、日にち、月、年が変わるごとに「毎回違う結果が出てるっぽく」見せることができます。実際のプログラムではもっと複雑かつ短い内容で、シンプルでありながらランダム性の高いものにするでしょう。
ともかく、コンピュータは本当に無作為な選択ができないので、わけのわからん計算をさせた結果から何かを表示させているわけです。
つまり、上記の計算で疑似乱数としている場合は、決まった時間に計算させれば確実に狙った結果を算出できてしまうわけです。実際は0.00000001秒まで計算したりもっと多くの変動する要素を入れるなどして、人間には狙えないものにするでしょうし、なにより内部計算式を公開することなどもしません。人間にとっては十分ランダムなのです。
現実世界とコンピュータの世界はどこまで違うのか
私たちは、いつどのタイミングでまばたきをするか、どのくらい息を吸うのかを意識していません。しかしそれらは厳密に言えばランダムではなく、脳から発せられた信号によって無意識に行われています。
さて、私たちが「無作為に選んだ」と思っている行動や思考は、果たして本当に無作為(ランダム)でしょうか。どのタイミングでまばたきをしたか。どのくらい息を吸ったか。人が計算できないからと言って、一見無関係に見える現象や他人の行動、部屋にあるホコリの数や忘れてしまった夜の夢などが影響していないとは限りません。
もしも蝶の羽ばたきどころかダニの動き、何億光年も離れた惑星の砂の数、宇宙の外側の存在など、森羅万象の過去現在未来に至る全てを無視せず計算できたとしたら、それらの影響によって10年後の今日にあなたが何回まばたきをするかなんて簡単に導き出せるかもしれません。
何千兆年も知的生命体が存在して科学が急速発達し続けたとしても辿り着けなさそうな領域ですが、科学及び数学的に未来が決まっていることが判明してしまう、なんて日が来るかもしれません。さすがに私たちが生きている間は無理だと思いますが。
それでも『バタフライエフェクト』が完全に計算できれば、世界常識が変わるのは間違い無いでしょう。
『バタフライエフェクト』が使われた作品
名作映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなど、過去や未来に行ける物語で起きる未来・現代への変化やタイムパラドックス(時間逆行で起きる矛盾)は『バタフライエフェクト』のわかりやすい例です。
時間の行き来ができるもの、そうでないものでも『バタフライエフェクト』は題材にされています。
音楽 UVERWORLD『一滴の影響』でも歌われている
UVERWORLDはメッセージ性の高い曲を歌うことも少なくありません。アニメのOPも多いので聞いたこともある人が多いでしょう、逆にその曲がアニソンだと知らない人も多いようです。
- アルスターン戦記:僕の言葉ではない これは僕達の言葉
- 機動戦士ガンダム000:儚くも永久のカナシ
- BLEACH:D-tecnoLife
- パズドラクロス:WE ARE GO
- 僕のヒーローアカデミア:ODD FUTURE
- 約束のネバーランド:Touch off
- 七つの大罪 神々の逆鱗:ROB THE FRONTIER
- (出典https://animesongz.com/person/singers/144)
中でも『バタフラエフェクト』要素の含まれる『一滴の影響』はライブで涙を流す人も少なくない、メッセージ性のとても強い名曲です。(『一滴の影響』青の祓魔師アニメの曲として使われていたんですね、アニソンだとは知らなかった。)
そもそもタイトルの『一滴の影響』というのも、わずか一滴の液体が波紋のように広がっていくことを表していますが、歌詞の中でも次のようなフレーズがあります。
バタフライ 蝶が羽ばたく 裏で起こす台風
『一滴の影響』 – UVERWORLD
ここだけ引用してしまうと印象が変わってしまうほど露骨になってしまいますが、『バタフライエフェクト』というワードをそのまま使っていないものの、知らないと作れない歌詞、そして聞く側も知らないと気がつけない歌詞です。
MVでは、2分割された画面でそれぞれのストーリーで展開されます。
悲しむ老人を見たらどうしますか。信号は守りますか。いじめを見たらどうしますか。苦しい時に頑張れるか、前に進めるか、悲しい時に泣けるか、幸せな時に笑えるか。全ては繋がっているんです。
Amazonレビュー5件で星5でした。納得。(※執筆時点2021/1/21)
ゲーム 『Until Dawn – 惨劇の山荘 -』(アンティルドーン)は『バタフライエフェクト』大きなテーマ
山荘ホラーゲーム『Until Dawn – 惨劇の山荘 -』(以下「アンティルドーン」)は『バタフライエフェクト』という概念がとても大きな意味を持つゲームです。
友人たちで山荘に遊びに来たところ、雪山から降りられなくなりたくさんの危険や殺人事件に巻き込まれていく…というストーリー。ハリウッド映画にたずさわるスタッフが脚本などを担当していることもあり、ホラー洋画のような印象があります。
直球で『バタフライエフェクトシステム』があり、選択肢によって「バタフライエフェクト更新」のメッセージが出て、日常会話や、動物の群れを横切るか逃げるかなどさまざまな小さな選択が未来を左右します。
登場人物のセリフでも、同じクラスであの席の配置でなかったら僕達は今ここに集まっていなかったと話す中で『バタフライエフェクト』という単語も口にしています。
ゲーム 『ライフイズストレンジ LIFE IS STRANGE』は時を戻り最適な『バタフライエフェクト』を探し出す
『ライフイズストレンジ LIFE IS STRANGE』(以下「ライスト」)は、時を遡ることで選択をやり直したり、現在時間では手に入らないアイテムを過去から回収するなどして物語を進行するマルチエンディング形式のアドベンチャーゲームです。
基本的には数分しか戻る事ができないものの、写真を通せばかなり開いた時間でも戻る事ができる場合があり、過去の選択によって現実での状況が思わぬ方向へ変わってしまう事がある、まさに『バタフライエフェクト』が起こります。
『バタフライエフェクト』や『塞翁が馬(さいおうがうま)』らしく、「良い未来にするためにした過去の善行が悲惨な未来につながる」ことも。
PVでも巻き起こっている嵐は、主人公の小さな選択という羽ばたきによるものかもしれません。「最高の選択」なんて無いかもしれない。あなた(主人公)の選択が未来を決めます。
ライストは能力を持つマックスが主人公でしたが、『ライフイズストレンジ ビフォア ザ ストーム』ではマックスの親友クロエが主人公。ライストでクロエのことが好きになった人なら、知っておきたい物語です。
ライフイズストレンジ2
ひとつの選択だけで 人生は決まらないから
ライフイズストレンジ2 キャッチコピー
選択が未来を変えるライフイズストレンジには2もあります。
1は少女たちの青春でしたが今度は兄弟の家族愛。能力を持ったのは弟のダニエルで、あなた(プレイヤー)が操作するのは兄のショーンです。
自分が直接的に能力を使えるわけではなく、兄の影響を受けた弟の行動が運命を決めるというとんでも無いゲーム。ヒーローに憧れる弟に、強い正義感を与えるのが果たして正しいのかどうか。一見正しく思える行動でも、良い結果につながるとは限らないのですから。
『バタフライエフェクト』まとめ
「蝶の羽ばたきというちいさな影響が、台風という大きな結果を起こす」それが『バタフライエフェクト』です。
夜に眠れない理由は、歩くのでエスカレータに乗ったことかもしれません。財布を忘れたのは昨日見た映画がおもしろすぎたからかもしれません。どんな小さなことや無関係に思えることでも、その影響が思わぬ大きな結果に繋がっているというのはよくあること。
『バタフライエフェクト』は私たちの日常にありふれています。