モンティ・ホール問題は、人の直感的感覚と論理的な結論が一致しないことが浮き彫りにされた有名な例で、実際にはパラドクス(矛盾・板挟みの心理)ではないにも関わらずパラドクスに似た感覚を覚える問題です。
モンティ・ホール問題
内容は下記のようなものです。
あなたの前には3つの扉があり、景品をめぐって正解の扉を当てるゲームをしています。
- 【前提】1つの扉の先には景品があり、他の扉2つはハズレ
- あなたはどれか1つの扉を選ぶ
- あなたが選んでいない残りの扉2つから、出題者がハズレの扉を1つ開く
- ここであなたは選んだ扉を変えてもいい
景品を当てたいと思うなら、選んだ扉を変更するべきです。変更することに意味がないと感じるでしょうか?
ここで多くの人が考える内容と実際の確率
下記は多くの人が陥る(おちいる)思考ですが誤りです。
「残り2つの扉からどちらを選んでも確率は2分の1だし、今選んでいるのが当たっているかもしれないから変える意味はない」
残りの扉は2つですが、実際の「最初に選択した扉が正解である」確率は3分の1のままです。
これは扉を増やすと少しわかりやすくなります。極端な例にして、扉の数が1000万にしてみましょう。
扉の数が1000万だったら
これは、最初に選んだ扉が正解している確率が2分の1ではなく、実は1000万分の1のままだということがイメージしやすい例です。
- 【前提】1つの扉の先には景品があり、他の扉999万9999はハズレ
- あなたは1000万の扉から1つを選ぶ
- 出題者がハズレの扉999万9998を開ける
- ここであなたは選んだ扉を変えてもいい
出題者があなたの選んだ扉ともう1つだけを残して他のハズレを無くしましたが、この時のあなたは「最初に選んだ自分の扉が当たっている確率は2分の1だ」と思えるでしょうか。
この例であなたの選んだ扉が正解している確率は1000万分の1のままで、もう1つの扉が正解の確率が非常に高いといえます。実際は「あなたが選んだ扉以外の全てを選択した」のと同じ確率になります。
あなたが最初に選んだ扉が正解している確率は1000万分の1
扉の選択を変えれば正解している確率は1000万分の999万9999
3つの扉では母数が少ないために「当たっているかもしれない」という気持ちが論理的思考を妨害しますが、1000万の扉と同じように3つの扉であっても選択を変えることで正解する確率が高くなります。そのままなら正解する確率は3分の1、変えれば3分の2になります。
これは前提となるルール(3つ以上の中から1つ選ぶ、出題者が選ばれた扉ともう1つを残してハズレを全て開ける)が同じであれば、扉の数が20前後でも1億以上でも同じことです。
これは心理戦ではなく確率の問題であり、コンピュータによるシミュレーションでも「選択を変えることで正解率が高くなった」という検証結果が出ています。最初から出題者がハズレの扉を開けることがルールに無く、「開けない/開けても開けなくてもいい」等の場合は成立しません。特に開けるかどうかが出題者に委ね(ゆだね)られている場合は確率でなく心理戦になってしまいます。
モンティ・ホール問題 まとめ
理屈で考えると正しいはずなのになんとなく腑(ふ)に落ちない、モンティ・ホール問題には、擬似(ぎじ)パラドクスとも言えるでしょう。
人は得をしたいという気持ちよりも損をしたく無いという気持ちが強いことで、「選択を変えたせいで外したらガッカリしてしまう」という心理も論理的思考を邪魔しています。
もしも人にモンティ・ホール問題を出したり話題にしてみたりするのであれば、解答発表や解説時に母数を増やした例を出しましょう。実際に絵やコインを用意して、イメージしやすくすると良いかもしれません。