そして僕は過去も喰らった
「海に化ける」 歌唱/花譜 作詞・作曲・編曲/カンザキイオリ
花譜の新曲「海に化ける」では上記の一節がある
今作もオリジナル曲の作詞・作曲・編曲は「過去を喰らう」や「命に嫌われている」のカンザキイオリだ
歌い出しから「喰」の文字が登場し、メロディやワードに共通項があるためよくよく聞き比べてみると、やはりこれは「過去を喰らう」のアンサーソングだと確信した
この場合のアンサーソングとは続編という意味で言う
「海に化ける」が「過去を喰らう」の続編であると考えられる根拠や、対比的な部分を見ていこう
記載について
当記事では下記のように記載する
- 海に化ける:今作
- 過去を喰らう:前作
- 歌う主人公の立場:花譜
あなたと言う存在
前作でも今作でも、花譜は「あなた」を強く求めている
「あなた」さえいれば諦めや恥などを覚えることなどなく、慰めも涙も必要なかった
しかし前作ではあなたの存在がどこにいるかはまったくわからず、ただ花譜が求める何か
今作では「あなた」が空を泳いでいることがわかり、花譜は嘆きを叫ぶだけではなく、消極的ながらあなたを迎える行動をとっている
好きだった理由
前作では好きだった理由に関して、何もわからなくなっている余裕のなさがあった
雨が好きだった理由も 好きな歌も忘れ去った
「過去を喰らう」 歌唱/花譜 作詞・作曲・編曲/カンザキイオリ
好きであると言う感情は残っていても、それがどうしてなのかは思い出せない
それが「喰らう」という言葉に繋がる飢えの原因の一つでもあったことだろう
今作では、どうして雨が、歌が好きだったのかを思い出している
雨が好きなのはあなたが 泣き虫だから
「海に化ける」 歌唱/花譜 作詞・作曲・編曲/カンザキイオリ
歌が好きなのはあなたも 歌が好きだったから
やはり、花譜を構成しているのは「あなた」だ
雨は空を泳ぐ泣き虫なあなたの流す涙なのかもしれない
しかし、私が注目するのはなにより「歌が好きなのはあなたも 歌が好きだったから」という部分
雨はあなたが好きだったから好きになっていると取れるが、歌に関してはあなた”も”となっていることから、花譜はあなたが歌を特別好きでなかったとしても元々歌が好きだったと解釈できる
バーチャルシンガーとして歌以外の活動は少ない花譜らしさを強く感じられる一文字だった
しかし、やはりあなたが花譜にあまりに大きな影響を与え続けているということは間違いない
大人
前作では大人になりたくないとも取れる一節がある
大人になるのが怖かった 強くなることが怖かった
「過去を喰らう」 歌唱/花譜 作詞・作曲・編曲/カンザキイオリ
深く考えなければ、普通は強くなりたいと願うのかもしれない
しかし前作の花譜は強くなることや大人になることを怖がってしまっている
この部分に関しても、今作では状況が進んでいた
大人になれると思ったのに 生き急ぎ膨れた僕は海に
「海に化ける」 歌唱/花譜 作詞・作曲・編曲/カンザキイオリ
ここの少し前の歌詞では自分を子供だと評価しながらも、上記引用では大人になろうとし、なれると思ったがそうではなかったという心情が窺い知れる
前作では「腑抜けた大人」といった、一部の大人という存在に対していい印象を持っていないような歌詞も登場していた
それでも怖がっていたはずの大人になろうとしたのは必要に迫られてか、前に進みたかったのかはわからない
今作ではあなたに再会するための行動で締め括られる
前作ではあなたがどこにいるかも歌われず、ただ寂しさや悲しさを叫んでいた
しかし今作ではあなたが空を泳いでいることが歌からわかり、雨や歌だった理由も思い出し、うまくはいかなかったものの大人になれるかもしれないと行動もしている
さらに曲のラストでは、消極的ながらあなたと再開するための行動をとっていた
ウグイスが鳴いても さよならなんかしてやるかよ
「海に化ける」 歌唱/花譜 作詞・作曲・編曲/カンザキイオリ
海になってあなたを待っている
海になった花譜は、いつかあなたが泳ぎ疲れて海に沈むのを待っている
これは罠だとかあなたが落ちてしまうということへのネガティブな期待ではないと思う
またあなたと近くにありたいということと、疲れたあなたが僕の海で安らげますように、という温かな願いではないかと私は解釈している
待つというのは自分から動かないので行動ではないと考える人もいるかもしれない
しかし自分で選択して実行する、ということは行動と呼ぶと私は思う
花譜はあなたがいる空へ向かうことはできなくても、いつかあなたが海へ降りてきてくれるかもしれないことを願い、海となって待つと言う行動を取った
前作では想いだけが歌われたが、今作では願いのために消極的ながらも具体的な行動を取ったのだ
まとめ
2曲の共通項と、状況の動きからやはり「海に化ける」は「過去を喰らう」のアンサーソング(続編)であると思われる
そして2年の時を経てわずかずつでも、確実に進化していく花譜の魅力を再認識する新曲だった
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