「わたしのアール」のジャンルとしてはストーリー系の悲しい曲です。和田たけあき(くらげP)は、衝撃的な曲をつくる印象があります。
- チュルリラ・チュルリラ・ダッダッダ!:クラスメイトの告げ口をして一人一人と減らし最後には教師をも蹴落とす学級サバイバル曲
- チェチェ・チェック・ワンツー!:好きな先生の声を録音しつなぎ合わせて自分へ愛を囁くボイスを作り校内放送で流す妄想暴走ヤンデレ暴走女子
そんな中で、わたしのアールは少し印象が異なる、静かめで泣ける曲です。
最初に
この記事の大半は独自解釈/独自考察です。和田たけあき氏のブロマガの記事1つ以外、他の方の考察やコメントを一才見ていないため、すでに否定された説や有力な説と同じ内容があるかもしれません。
※曲に登場する主人公が「わたし」なので、執筆者の一人称をこの記事だけ「僕」にしています。普段の一人称が「私」なので、間違えてわかりにくい文になっていたらごめんなさい。
「わたしのアール」ストーリー
曲の主人公である「わたし」はある日、飛び降り自殺をするために屋上で靴を脱ごうとする場面まで進みました。
三つ編みの先客
先客、つまり自殺をしようとしている子です。
「ねえ、やめなよ」
本当はどうでもよかったけど、つい声をかけてしまった。そんな歌詞が続きます。
三つ編みの子は、運命の人に愛されたかった想いが叶わなかったことを告白します。
「わたし」は三つ編みの子に「ふざけんな!」と叱咤します。欲しいものが手に入らないくらいでわたしより先にいくなんて。奪われたわけでもないのに。
三つ編みの子は、話したら楽になったと消えます。
二人目の先客 背の低い女の子
背の低い子はいじめを受けていました。
好きな人と結ばれなかった子は欲しいものが手に入らなかったけれど、何かを奪われたわけではないから思いとどまることができましたが、今度は無視され、奪われ、居場所がない子です。
「わたし」は彼女のことも否定します。うちでは愛されてるんでしょ?と。
「おなかがすいた」と泣きながら、背の低いをは消えていきます。
その後も続く先客
今日こそは飛び降りようと屋上へ行くたびに、「わたし」は先客と出逢います。おそらく、みんな違う悩みや傷をかかえていましたが、「わたし」が追い返す日が続きます。
黄色いカーディガンの子
「わたし」は自分と似た悩みの子と出逢います。
家庭内暴力を受けているようで、「家に帰るたびに増え続ける痣(アザ)を消し去ってしまうために来た」と言います。今までは先客に「やめなよ」と言って追い返していた「わたし」。
初めて「やめてよ」と懇願します。
しかし「わたし」にはこの子を止めることはできないし、止める資格もないと考えてしまいます。それでもここから消えて欲しいと、君を見ていると苦しいんだと伝えました。
黄色いカーディガンの子は「今日はやめておくよ」と消えてくれます。
先客はもういない
曲の最後に、先客はもういませんでした。
「わたし」が飛び降りるのに邪魔する人はいません。邪魔してくれる人がいません。
ここで今までの先客の正体がわかります。
カーディガンを脱ぎ、三つ編みを解いて、背が低い「わたし」は、今から飛びます。
ここで、この曲はおしまいです。
考察
先客は「わたし」の心・悩み
これは僕の中で言うまでもない確信部分なので、むしろ説明がむずかしく感じます。
先客として三つ編みの子、背の低い女の子、黄色いカーディガンの子が登場しますが、最後に「わたし」はカーディガンを着ていたこと、三つ編みをしていたこと、背が低いことがわかります。
曲だけではわからない部分ですが、MVで脱いだカーディガンの色も黄色です。
今まで自殺しようとしていた先客たちはすべて「わたし」で、「わたし」は自殺する理由という先客を「やめなよ」と説得し、消し続けました。
先客は「消えてった」と表現される
「その子は帰っていった」ではなく「消えてった」と表現されています。
先客は「わたし」の辛い気持ちによる自殺を実行する強い決意なので、原因が解決しなくてもなんとか消すことができて、自殺を思いとどまることができました。
「わたし」の悩みと死のうとする理由
「わたし」が死のうとするのは、好きな人には想いが叶わず、学校ではいじめられ、家でも暴力を受けているから。歌詞に登場した三つ編みの子、背の低い女の子、黄色いカーディガンの子だけでなく、「わたし」は何人かを追い返しています。
彼女が死ぬ理由はもっともっと、もっとたくさんあるのでしょう。
死のうとしているけれど、死にたくはない
「死のうとしている」は「死にたい」と違います。
希死念慮と言われる明確な根拠がなくても死にたい気持ちがあるわけでなく、明確な苦しみがあって解決できずそれがこれからも続くので、死ぬしかないと考えている状態です。
悩みの原因が解決すれば死ななくて済みます。解決しなかったとしても、他に支えとなる何かがあればなんとか死のうとする理由を「追い返す」ことはなんとかできていました。
今まで「やめなよ」という制止で思いとどまれていましたが、最後には「やめてよ」と言うしかなかったのは、もう死ぬことを止める理由が何も無くなってしまったから。
根拠はなく、ただ「死にたくない」という気持ちから出た最後の抵抗。だけど明確な理由がないと思いとどまれないほど、追い詰められているんです。
タイトルの「アール」とは
理科で習うことで、電流(I)=電圧(V)÷抵抗(R)という公式があります。
R(アール)は抵抗。
自殺しようとする心に対して「わたし」が抵抗している曲と解釈できます。
曲の中で、まだ「わたし」は飛んでいない
歌詞の最後は「今から飛びます」と締めくくられます。
カーディガンを脱いで三つ編みを解き、飛ぼうとしていますが、まだ飛んだとは言っていません。
これは作曲者の和田たけあき氏が明確に言っています。
5.「わたし」は結局飛んだの?
歌詞を読んでもらうとわかるんだけど、この歌の最後は、文章の最後としても時系列の最後としても
「わたしは今から飛びます」
と、決意したところで終わっている。
もう、言いたいことはわかってもらえてると思うんだけど「飛んだとは限らない」
ということ。
https://ch.nicovideo.jp/electripper/blomaga/ar941502(ページが削除、あるいは非公開にされました)
聞いた人の解釈次第です。
僕の願望と、曲後の予想
僕の願いは『この後に思いとどまり、問題もある程度解決して「わたし」が立ち直ったらいいな』ですが、考えは『自分ではもう止められず、学校にも家にも居場所がない「わたし」を止めに来る人はいない』です。
幸せになって欲しいけど、曲の中でわかる限り救いはありません。
「わたし」が助かるシナリオを考えてみる
自分の中で否定したものですが、可能性は考えました。否定したものですが。
怖くて飛べなかった
候補の中でもっとも可能性が期待できます。
しかし先客を消す時に「死ぬのは怖いでしょ」とか「きっと痛いよ」なんて言う言葉はありません。すでに飛び降りの恐怖くらいでは止まる理由にならない段階なんだと思います。
実は友人がいて、助けに来てくれる
やはり考えにくい。
「わたし」は失恋した時に、「欲しいものが手に入らないなんて、奪われたことすらないくせに!」と先客を消しています。これを自分で言わないといけないのは、他の誰も言ってくれなかったからだと思います。
助けてくれる友人がいるとしたら、この時はまだ屋上にさえいかずに済んだのでは。
教師が止める
3パターン。なくはないと思うけど、解決するかと言われると疑問。
いじめに加担または黙認していた教師
「自殺されると面倒なことになる」と、自分のために止める
いじめに気づいてなかった教師
偶然、屋上へ向かう生徒を見つけて様子を見に来たら自殺しようとしていたので止める。
話を聞き、いじめや虐待を知った教師が「わたし」を助けるために動き出してくれる。
いじめをなかなか止められなかった教師
ずっと心配していたが、なかなかいじめ問題を解決できなかった教師。
最近特に「わたし」の様子がおかしいことに気がついていて、曲最後の日に「わたし」のあとをおったら自殺しようとしていたので止める。
用務員が止める
仕事としての見回りや、「最近よく屋上に行く生徒がいるから確認するように」と指示を受けていてチェックしに来たら飛び降りようとしている生徒がいた。
用務員は良い人で、せんべいとお茶を出してくれて話を聞いてくれる。解決はむずかしいかもしれないけれど、少し癒された「わたし」が少しの間自殺を思いとどまる。
家族が止める
1度は「温かいご飯もある」と思いとどまっていたのに、後日「家に帰るたびに増え続ける痣」が出ます。これは矛盾ではなく、状況が悪化したかどちらも同時にあったと考えられます。
- ストーリーの中で虐待が始まった
- 温かいご飯は出されるが、続く虐待に限界だった
- 虐待があってもご飯は出されていた、それすら無くなった
詳しくは各下記項目で。
ただ、「わたし」が飛び降りる最後の日にちょうどよく家族が駆けつけるというのはかなり苦しい。
三つ編みの子は「おなかがすいた」と消えることができたのに、家も安息の地でなくなったのはご飯すら食べられなくなった可能性も考えてしまいます。
実は愛していた
家族も経済や精神的な理由で追い詰められていて、本当は「わたし」を愛しているのに虐待する自分を制御できなかった。
学校まで様子を見に来て、飛び降りようとしている「わたし」を止めて抱きしめ、泣きながら謝る。その後ぎくしゃくしながらでも、少しずつ改善していく。
虐待していたのは特定の人物だけで、別の家族は「わたし」を愛してた
いろんなパターンが考えられますけど、家族が二人以上なら成り立ります。
- 虐待しているのは父親で、母親は味方。
- 虐待しているのは母親で、兄弟姉妹は味方。
父・母とかは実親でも再婚相手でも。ある日突然始まったなら、再婚相手の方が想像はしやすい。
再婚相手の子供というのも考えやすいですが、最初は出ていた温かいご飯がでなくなったのだとしたら保護者ポジションの方が可能性高いと思います。
飛び降りたが一命を取り留め、家族やクラスメイトが態度を改める
「わたし」が飛び降りをしないパターンより、こちらの方がまだありそう。ただ、一命を取り留めたとしても周りが態度を改めるかは疑問。
集団でイジメをする心理がわからないので想像ですが、1対1でも圧勝できるような相手を集団でイジメるって、相手が死んでも笑えるくらいの存在じゃないと無理では?
「イジメまくってたけど、そこまで追い詰められてたなんて…今までごめんね」ってなるんでしょうか。
学校やPTA、ニュースなどで問題になってくれたら結果的に態度改善につながるかもしれない。「わたし」か加害者か教師が転校することにもなりそうですが。
少年漫画やライトノベルに登場するようなヒーローが助けに来てくれる
フィクションかつ作風次第では可能性が。
とある魔術の禁書目録の主人公上条さんなら、ヒロインの「わたし」を助けた後に親を説得に行って巨大な陰謀に遭遇しそう。親が外道なら男女平等パンチ。
ONEPIECEの主人公ルフィなら海に連れ出してくれるかもしれない。
鬼滅の刃の主人公竈門炭治郎なら家族愛に気づかせてくれるかな?一番平和なストーリーになりそう。
まとめ&あとがき
作曲者の和田たけあき(くらげP)はあえて全てを語らずに、聞いた人の解釈にまかせ、二次創作についても容認してくださってるようです。
僕と違う解釈がある方もブログやツイッターなどでガンガン考察を公開して欲しいな、なんて思います。
「ストーリー」部分を書くため久々に聴いたらかなり泣きました。一人カラオケで入れたこともありますが、泣いちゃうんでまともに歌えたことないかも。